デンマークは、国民の幸福度ランキングで第一位に輝く国である。高福祉、高負担と言われる実態を説明している。
デンマークの福祉制度
・医療費が無料
国民一人一人には「家族医」と呼ばれる主治医が割り当てられる。住民は自分の判断で大病院に行けず、家族医がまず診ることで、大病院が常に混雑するのを避ける。
・出産費用が無料
育児制度も充実しており、保育園に加えて、「保育ママ」(在宅保育)や「ベビーシッター」という個人による託児制度がある。料金の75%が助成される。
・小学校から大学まで授業料が無料
小学校の時から職業教育が行われ、早い段階から将来の職業について考えさせる。高校以上になると「資格」を得る場になり、それが就職に直結していく。デンマークでは、会社員になるのも資格が必要な制度になっており、必ず適応する学校で資格をとらなければならない。
・国民年金はすべて国税によって賄われる。
国民年金の支給は65歳から始まる。生活費を十分に持っている高額所得者には払う必要がないとされる。
デンマークの高負担
・給与の1/3以上を納税、消費税25%
消費税は付加価値税と呼ばれデンマークでは25%と欧州で2番目に高い。しかし、食材の価格が日本と比較して安いため、贅沢な暮らしをしなければ、消費税25%はそれほど生活を圧迫している感じはしない。例えば豚肉500gで約300円。チーズやバターも手頃な値段で買える。
・国民負担率71.7%
国税と地方税および年金や健康保険料などの社会保険料を含めた所得に対する負担率は71.7%になる。これが国の高福祉サービスの財源となっている。
デンマークでは、公平に税を徴収するために国民一人一人に「個人登録番号」が与えられ、法人には「事業者番号」が与えられる。この番号で納税や年金支給などが管理され、お金の流れも管理される。銀行は全ての口座残高を税務署に報告する義務があり、国民は株や債券残高の報告義務があるなど、脱税が困難な仕組みになっている。
デンマークの問題点
・離婚率が高い
離婚率は約45%。デンマークでは多くの女性が働いており、経済的な自立ができているのが要因の一つ。離婚原因で多いのが男性の家事・育児への非協力である。
・自殺者が多い
年間の自殺者は約650人。10万人あたり11.9人の割合で、EUでも中位にある。高福祉を実現しても、全ての国民を幸せにすることはできない。
・孤独と感じる人が多い
子どもが18歳で独立するため、家族1、2人の世帯構成が多い。
共生の精神が大切
高負担には、国民が行政を信頼できなければならない。デンマーク人は「共生」の精神を持っており、国を信頼している。それが社会全体のバランスを保っている。