中国の人材戦略
中国政府による「海外への人材送り込み政策」により、2000年以降、中国から海外への留学生や、科学技術研究に携わる人材の海外移住が急増している。
米国で博士号を取得した出身大学で一番多いのは中国の清華大学、次が北京大学である。日本はベスト50の中に1校も入っていない。2006年の統計では米国における博士号取得者約5万人の内、約1/3が外国人留学生であり、中国は5002人と圧倒的な数である。日本はわずか330人にすぎない。
人材送り込みと同時に行っているのが、「海亀政策」と呼ばれる在外中国人研究者の帰国優遇策である。帰国者には住居や車の購入費用などの経済的優遇措置の他、都市戸籍も与えられる。
帰国者は毎年50%の伸びを見せており、2009年に10万人を突破し、中国国内の研究の質は上がっていくと予想される。
中国の科学技術の実力
・宇宙開発大国
現在、独力で有人宇宙飛行を達成できる国は、中国、ロシア、米国のみである。ロケットの打ち上げ回数では日本の1.5倍の実績があり、その成功率は90〜95%と他の宇宙開発国と同レベルに達している。
・ライフサイエンス
2009年には中国の研究所が、初めてiPS細胞から、マウス1匹を丸ごと作りだした。この研究所の開発資金はすべて政府が負担しており、600名のスタッフの平均年齢は30歳未満、研究グループのリーダーはすべて米国帰りの研究者である。
中国ではライフサイエンス分野を特に重視しており、貧困層の衛生状況の改善や現代病や高齢化社会への対応などに期待している。特に植物バイオと呼ばれる分野は、農村部の貧困の改善への対応として力を入れている。
・中国のハイテク企業
2008年の国際特許出願ランキングでは、前年1位のパナソニックを抜き、1位になったのは中国の通信機器メーカーである。中国のハイテク企業の中には、世界に通用する研究開発型の企業が少なからず存在する。
発展への課題
・「メンツ」重視による非効率
実質的な進歩よりも、目に見える派手な成果を重視する特質がある。世界第2位というスーパーコンピュータは、実は理論値に対して実効性が極端に低い。
・汚職や不正の横行
優秀な若手に資源が配分されず、配分の権限を持つ者と「良い」関係にある研究者に多くの研究資金が流れる、といった事がある。不正監視の機能が欠如していることが問題となっている。